シングルマザーの現状を知る
- fumie goto
- 10月13日
- 読了時間: 4分
更新日:4 日前
9月9日(火)シングルマザーの現状を知るため、オンラインの勉強会を行いました。
前半は日本におけるひとり親の現状、世界から見た日本のシングルマザーについて、さまざまなデータから学びました。
そして後半は3〜4人のグループに分かれて、2つのテーマについて話し合いました。
①もし明日からひとりで子育てすることになったら?
②自分の職場や地域では、シングルマザーがどんな壁にぶつかると思うか?
この記事では、勉強会の内容をみなさんにも共有したいと思います。
日本のひとり親の状況

このグラフは日本のひとり親世帯の構成です。母子家庭が89%と圧倒的に多く、父子家庭は1割程度にすぎません。なぜ母子家庭が多いのかというと、離婚後の親権の多くを母親が持つこと、また社会的に「子どもは母親が育てるべき」という意識が根強いことも背景にあります。
就業状況を見ても差があります。母子家庭の正規雇用は半数にとどまり、非正規が4割近く。父子家庭では正規雇用が7割と、母親よりも安定した雇用に就いている人が多いのです。
この時点で、母子世帯が働き方の面でも不安定さを抱えていることが見えてきます。つまり、スタートの段階から母子家庭は収入や雇用の安定性で不利な立場に置かれているといえます。
ひとり親世帯の収入

次に収入の面です。これはひとり親世帯の親の就労の平均収入を表した表です。父子家庭の、つまり父親一人の平均年収は492万円に対し、母親一人の平均収入は236万円と、およそ半分しかありません。特に非正規で働くシングルマザーの場合、年収は125万円程度になります。
一方、生活費を見ると父子家庭も母子家庭も20万円〜24万円と大差はありません。手盾などを含む母子世帯全体の収入平均は373万円で、児童扶養手当の受給要件に近い水準の世帯が多いことがわかります。
さらに、国税庁の公表データによると、既婚未婚関係なく、女性の平均給与は280万円で、男性の半分ほどしかありません。正規雇用だけで見ても、女性の給与は男性の約75%にとどまります。つまり「シングルマザーだから」だけでなく、「女性である」という要素も大きく影響しているのです。
また、養育費はどうでしょうか。母子家庭のうち、養育費の取り決めをしているのは約4割に過ぎません。しかも「実際に今も受け取っている」という人は全体の4分の1程度です。
背景には、取り決めがあっても支払われなくなるケースが多いこと、裁判や調停を経なければ強制力が弱いことなどがあります。
結果として、多くの母子家庭が養育費に頼れず、自分の収入だけで子育てをしなければならない状況になっています。
国際比較で見る日本のひとり親の状況

日本のひとり親の就労率は先進国の中でも86%と、世界的に見ても非常に高いです。日本のひとり親の9割がシングルマザーだと考えますと、つまり、多くのシングルマザーはしっかり働いています。
一方で、相対的貧困率は48%と、先進国の中で最悪の水準です。「働いているのに貧困」という状態が広がっているのが、日本の特徴なのです。ドイツやフランスでは、就労率は日本ほど高くなくても、社会保障や制度の充実で貧困率が抑えられています。
千葉大学の大石亜希子教授の研究によると、シングルマザーの労働時間は働き盛りの成人男性とほぼ同じで、正社員の場合はもちろん、パートなど非正規社員の場合でも、シングルマザーは年間2000時間近く働いている人が多いのです。
それなのに賃金が低い、先ほど見たように、日本の女性正社員の時間当たりの賃金は男性正社員の7割ほどです。さらに女性非正規社員の時間あたりの賃金は、男性正社員の半分ほどになります。
日本では、制度の支えが弱いために、努力が報われにくい現実があると言えます。
シングルマザーの就労の困難

では具体的に、どんな困難があるのか整理してみましょう。
まず、子育てと仕事の両立です。子どもが急に熱を出す、学校行事がある、そうした時に休みやすい職場はまだまだ少ないのが現状です。
次に、非正規雇用の不安定さ。シフト制のパートや派遣は時給が低く、契約が切れる可能性もあります。
また、正規雇用への再就職の壁も大きいです。出産や育児で仕事を辞めると、再び正社員になるのは難しく、雇用側も「子育て中だと制約が多いのでは」と採用をためらう傾向があります。
さらに、能力開発の機会が少ないこと。非正規では研修やスキルアップのチャンスが限られ、長年働いても収入が上がらないという悪循環につながっています。
勉強会を終えて
近年、日本ではシングルマザーに限らず自己責任論が多く見られています。私たちのところに相談に来られるシングルマザーの方からも、さまざまな状況で、どこか責められたり、偏見を持った目で見られた経験があるという方の声を多く聞いてきました。しかしこのデータを見ていく中で、離婚や死別からたった一人で子どもを育てていくことになった女性たちの、スタートラインがあまりにも過酷な状況であることが伺えるのではないでしょうか。
この勉強会は、シングルマザーの就労課題を“自己責任論”ではなく“社会構造の課題”として共有し、みんなで何ができるかを考える場となりました。
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